琵琶豆知識

■目次   琵琶の種類    琵琶の歴史    薩摩琵琶について

3.薩摩琵琶について


 まずについて説明します。2つある撥先のうち、撥を握ったときに手前にくる方だけが古典の演奏で使われます。撥は表裏ほとんど同じですから裏返せばもう片方の撥先も使えるわけです。
 撥はかなり大型で、それは薩摩琵琶音楽が男性的な性格をもっているということに貢献しています。すなわちこの撥は弦を弾奏するためだけでなく、楽器の腹板を強弱さまざまの度合で打奏する(はたく)ためにも利用されて、打楽器的な効果をあげることができるからです。こうした弾法のためには、撥の打料はかなりの固きと、同時に柔軟性をもっていなければなりません。
 よいとされている木材は黄楊(九州指宿のものが最高)・黒柿、稽撥古には柊木・椿というのが定説です。しかも、これらの木材は10年以上ねかせて充分に枯らしてから加工しないとよい音は出せないということです。

 次に、楽器本体は曲頸梨型といわれる形状をもっています。ホルンボステル=ザックスの楽器分類ではリュート属の弦鳴楽器に属します。梨型の胴体は表と裏2枚の板をはり合わせてり、中は空洞になっています。なだらかな曲面を成すこの板の材料は桑が最良とされ、主要部分がすべて桑でできていれば総桑といって高価なものです。片桑というのは表にだけ桑を使う場合のことです。

 薩摩琵琶正派が使う楽器は四弦四柱ですが、錦心流では五弦五柱を好む人も少数います。五弦の場合には4弦と5弦が同音に調弦され、弾弦も同時に行なわれます。
 この2種類の楽器で同しフレーズを演奏しようとすれば違った指使いになることは当然しばしばあります。鳥口の部分を写真で見ると弦と弦の間がかなりあいているのがわかります。これは現代的な手法で各弦を別個に扱わなければならないことがあるために、鶴田錦史師匠が考案したものです。普通はそこで弦が密集した感じになっています。

 薩摩琵琶の柱の特徴は幅が広くて、しかも丈が高いということです。幅が広いのは三味線の一の糸のようなサワリの効果を出すのに役立っています。そして丈が高いことは柱間に置いた左手指で弦を押したりもどしたりして弦の張力を加減するのに都合がよいのです。頻繁に使う柱2〜5の材料となっている朴の木は比較的柔かいものなので、弦の摩擦でできた糸道を消すために削らなければならないことがよくあります。
 柱と柱との間隔は、1つ1つの楽器で少しずつ違っています。これでは正確な音が出せないように思えるかも知れません。しかし実際には柱と柱の間(厳密には使おうとする柱の方に近づけて)に置いた指でもって微妙に調節できるのです。もし柱の幅をギターのフレットのように狭く(細く)して正確な間隔で取り付けたならば、サワリの効果が出せないばかりか、型にはまった味気ない音程しか出せないことにもなります。このようないわば非合理的な楽器構造は、それなりの理由があっていままで保たれてきたのだといえます。
 は撚り合わせた絹糸で、写真にあるような鶴田師匠工夫の楽器では1弦が最も太くて他は少しずつ細くなっています(普通は1、2、3がほとんど同じ)。4、5弦は同し太さで、この最も細い弦が指の圧力で張力加減するときの範囲が一番広く、したがってニュアンスに富んだ旋律演奏にむいています。
 逆に1弦は太いので伸縮性に乏しく、普通は放弦音だけをいわばドローン的に奏するのに使われます。弦の太さはまたサワリと重大な関係をもっています。

 

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