琵琶豆知識
2.琵琶の歴史
西アジアに起源を求めることができるといわれる日本の琵琶は、起源が同じと推測されているアラブ圏のウードやヨーロッパのリュートさらにはギターなどと親類関係にあるといえます。
楽琵琶
日本への導入の直接のきっかけをつくった中国や朝鮮の琵琶とはさらに深い関係をもっています。類似した楽器がこのように多くの地域で散見されるときに興味深いことは、それぞれの楽器の構造や奏法は当該民族のもつ文化価値・音楽理念といったものを多かれ少なかれ反映しているということです。
たとえば、近代中国の琵琶は多いものでは17もの柱(あるいは柱)ないし駒――ギターでいえばフレット――がついていて左手の名人芸的運指による派手な音楽表現のために役立つのに村して、日本の伝統的な薩摩琵琶では柱の数こそ4〜5と少ないかわりに柱間に置いた左手指でもって弦の張力を加減しながら微妙な余韻の変化を目指す、いわば地味な音楽表現が重要なのです。
日本内部でも楽器としての琵琶はいくつか異なる構造・形態のものがそれぞれ異なる種類の音楽を支えてきて、それらの音楽は歴史的展開において多様な並存状況を呈してきました。
薩摩琵琶
その中で最も古いのは楽琵琶と盲僧琵琶でしょう。
楽琵琶は主に7〜8世紀頃大陸から伝えられたといわれる雅楽の管弦という合奏音楽に使われます。
盲僧琵琶は8世紀以来の一種の宗教的声楽で、荒神琵琶ともいいます。これは京都附近にはじまり、後には九州に伝えられて福岡の筑前盲僧と鹿児島の薩摩盲僧の2系統に大きく分かれました。滑稽琵琶や肥後琵琶は宗教音楽ではないのですが、やはり盲僧琵琶の流れをくむ音楽です。
有名な平家琵琶(平曲)は琵琶法師が平家物語を弾き語りする音楽で、12世紀に京都で成立し、他の地域でも広く庶民に楽しまれていました。
筑前琵琶
16世紀後半以来の琵琶歌はそれまでの琵琶音楽とは趣がかなりちがっています。後に薩摩琵琶と呼ばれるようになった音楽は、薩摩藩の島津忠良が武士の士気を鼓舞する目的で盲僧琵琶の楽器を借用して教訓歌を歌わせたことに由来しています。それがさらに町人にも移行して士風琵琶・町風琵琶の区別がなされ、明治以後に薩摩琵琶として全国に普及したのです。これを正統に伝承しているのがいまでは薩摩琵琶正派と呼ばれ、新しい要素をとりいれた大正の薩摩琵琶錦心流や昭和の錦琵琶とは区別されています。
琵琶歌にはさらに明治半ばに筑前盲僧の系統より出た筑前琵琶があります。これは薩摩琵琶や三味線音楽の影響を示す様式をもっているのですが、薩摩琵琶とくらべると旋律が豊かで女性的といわれています。
現代においては、琵琶楽全体の伝統的語法に加えて新しい語法が開発されつつあり、豊かな作曲素材を広く世界に提供しはしめています。
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