紹介記事

『音楽の世界』2018春号にインタビュー記事が掲載されました

音楽の世界

 日本音楽舞踊会議『音楽の世界』(2018年春号)に「鶴田錦史と武満徹、『ノヴェンバー・ステップス』の頃」とのタイトルで、インタビュー記事が掲載されました。

 武満徹(1930ー1996年)の「ノヴェンバー・ステップス」(1967年)以降、尺八と琵琶がそれぞれ脚光を浴び、尺八についてはその後さまざまな形で評判その他が耳に入ってきているが、琵琶についてはその前後の話がなかなか伝わっていない気がする。そこで、鶴田錦史門下で「ノヴェンバー・ステップス」を鶴田先生に直伝されて演奏する田中之雄氏に、インタビュー形式で詳しく伺ったとのリード文で始まるインタビュー記事が、全11ページにわたって掲載されている。

「邦楽ジャーナル2005年3月号」に尺八奏者、三橋貴風氏とともに二人の対談記事

 

 4月13、14日の「武満徹〜マイ・ウェイ・オブ・ライフ」東京公演を前に、『邦楽ジャーナル』2005年3月号に、同公演プログラムの目玉である「『ノヴェンバー・ステップス』を語る」と題して、尺八奏者の三橋貴風氏とともに二人の対談記事が掲載されました。

 同公演は、ベルリンで6回、パリで4回公演が繰り広げられ連日満席の盛況ぶりだったが、「なぜ武満作品がドイツで上演されたのか」に始まり、三橋氏と共に田中が公演の中で演奏者であるとともに役者を演じることになるのだが、その回想、二人にとってのノヴェンバー・ステップスとは何か、などについて語り合っています。(2005.3)

 

音楽之友社刊「音楽の友2001年9月号」に紹介される

 

 音楽之友社『音楽の友9月号』に「マレーシア・フィルにアジアの未来を見る」とのタイトルで、1998年にクアラルンプールに創設され、2001年秋初来日公演するマレーシア・フィルの紹介記事が掲載されました。

 その掲載記事の中で、同年6月23日、同フィルの招きでマレーシアを訪れ、武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」の琵琶を演奏する田中之雄が写真とともに紹介されました。尺八は三橋貴重風氏。(2001.8)

 

音楽之友社刊「邦楽ディスク・ガイド」に紹介される

 音楽之友社から『邦楽ディスク・ガイド』(本体価格1800円)が、2000年11月10日出版されました。邦楽全般を扱うこの本の琵琶の紹介欄の琵琶の写真は、田中之雄所有のものです。また、CD『鎮魂雅哥』が、星川京児氏の評とともに紹介されました。

 『邦楽ディスク・ガイド』は星川京児、田中隆文編で、縄文から現代まで日本のルーツ・ミュージックを探り、邦楽コンテンポラリー・シーンを覗く!と銘打ち、邦楽の歴史、概要はもちろん、教養としての名曲・知っておくべき人名、邦楽界初の各ジャンル別にCD300タイトル以上のガイドも列挙。「時代を変えた一枚」「邦楽を変えるキーパーソン」などといったコラムも豊富で、邦楽に関心のある人には必読の書とも言える1冊です。

 見開きの琵琶の紹介欄には、「楽琵琶」「筑前琵琶」「薩摩琵琶」の写真が掲載されていますが、編集部からの依頼で田中が撮影協力に応じたものです。CD『鎮魂雅哥』の紹介欄では「薩摩琵琶の現状と、可能性を見るに最適。楽器の音色もいいが、鋭さと同時に艶っぽさを捉えた録音は見事」と評しています。(2000.11)

 

インタビュー収録が本に

 ラジオ放送収録のため受けたインタビュー記事が、東海ラジオ放送・静岡放送・信越放送「人物スケッチ ラジオ紳士録」PART16(平成十一年度版)という本になりました。

 この本の中で「基本になってるものはやっぱり古典なんです」とのタイトルで、琵琶奏者、関ヶ原合戦記・秋風の賦作曲の肩書でインタビューが掲載されています。(2000.11)

 その一部を紹介します。

――岩城宏之さんの指揮で武満徹さんの曲を演奏なさったり、たくさんの現代音楽家と一緒に演奏されてこられたんですが、そもそものきっかけもその辺りだったそうですね。

「そうですね。一番最初にレコードで聴いたのが、武満徹作曲の『エクリプス』という曲なんですけども、琵琶と尺八の二重奏の曲なんです。それを聴いて琵琶に興味を持ちまして、始めたような感じです。」

――二十歳ぐらいの時ですか。

「二十歳ちょっと前ぐらいです。琵琶をやる前にクラシックギターをちょっとやってたんです。ギターをやってれば琵琶もそんなに難しくないだろうと思って始めたんですけど、いざ始めてみると、音の少ない楽器はそれなりに違う難しさが出てくるんですね。やっていっくうちに気がつきました。一つの音に余韻を持たせたりとか、そういうことがまた魅力で、難しいところでもあるんです。」

――「若い世代の人が現代音楽と絡ませて、興味を持っていってくれるといいですね。

「現代音楽を演奏するにしても、基本になってるものはやっぱり古典なんです。例えば武満さんの『ノベンバーステップス』なんかも、古典的な手法とかそういうものが主体となってますから、特別新しい奏法が多く出てくるとかそういうことはないんですね。……一つ一つの音を生かして出していかないと、面白くなくなったりするんですよね。だから古典も現代音楽も別ということはないような気がしますね。」

――田中さんは今新しい曲に挑戦していらっしゃいまして、それが実は関ヶ原合戦に関わっている曲です。大貫昭彦さんが作詞をされて、そこに曲をつけられたのが、田中さん。合戦で東軍と西軍が皆様ご存知の通り戦って、石田三成の西軍が破れるわけなんですが、その敗れた武将の中に島政勝という優れた武将がいて、彼が十六歳の初陣に立った丹羽平三郎に討たれてやるというストーリーなんですね。現場にお立ちになって大貫さんが詩をお書きになったそうですけど、その後ディスカッションをいろいろなさっているわけですね。どんなふうにお感じになりましたか。

「私は、関ヶ原というと大きな戦いというイメージだけで、その戦いの中にこういう物語があったんだというのは知らなかったんですよね。今回こういう作詞を見せていただきまして、物悲しさとか滅びゆく情景とか、琵琶の表現する世界とぴったりじゃないかなと思いましたね。平家物語に出てくる敦盛に、感じが似てるところがありますね。」

 

世界音楽のなかで琵琶を聴く

民族音楽プロデューサー 星川京児

 職業がら様々な楽器を録音してきた。特に弦楽器は、自身の好みもあって優先的に取り上げてきたつもりだが。そのなかには、形状からの想像を超えた響きを与えてくれたものも少なくない。だが、最も衝撃的だった楽器を挙げろといわれれば、筆頭にくるのが薩摩琵琶。静寂からパーカッシヴな衝撃音まで、こんなに驚かせてくれるものは他にない。それだけに、録音も難しいが。

 サワリにおいてシタールを凌駕し、一音の存在感でモロッコはグナワのグンプリに匹敵する。ホワイト・ノイズのような弦の裂音。遠く西アジアからの旅の果て、楽器としての合理性を捨て去ったかにみせて、森羅万象を映す力を獲た、というと大げさだが、要は計り知れない表現力を持っているということである。

 田中之雄の琵琶は、その果てしないスケールを垣間みせてくれる。声もそう。
 師の鶴田錦史を初めて聴いた時もそうだが、言葉が理解できるという驚き。当たり前のことなのかもしれないが、同時代の日本語として伝わってくる。源平、戦国の武将が、その合戦が、映像的に甦ってきて、初めて、このジャンルがどういうものであったか判ったような気がしたのだ。もちろん、師匠譲りの綿密な計算・演出あってのことに違いないとは思うのだが。

 普段、邦楽の外側に身をおく者として、歌もの、語り物を問わず、楽器として声を聴く癖が抜けない。つまり、ほとんど外国語のようなものだったのである。

 世界各地の古典、伝統音楽の大家たちから、日本の伝統音楽を訊かれて戸惑っていた時、すぐ側に大変な音楽の宝庫があると気付かせてくれたのが、鶴田錦史であった。そして今も、世界に、日本の古典、同時代音楽として、田中之雄を紹介できるというのは、何にもまして誇らしいことなのである。