雨風の強い五月の休日でした。何気なく庭の草花を眺めていました。家内が植えた一輪のチューリップの花が風雨にうたれ今にも散りそうでした。何時散るのか見ていようといつの間にかそんな気持ちになっていきました。十分、二十分と見ていましたが花びらは散りません。風雨はますます強くなり地面に花びらをこする激しさでした。そのうち私は、花が散らずに何時まで花びらを付けて頑張れるかを見ていようと思うようになっていました。時がたつにつれ、ある種の感動が込み上げて来ました。思わず頑張れ、頑張れと心の中で叫んでおりました。ふと気が付くと雨風が納まり雲の切れ目から日が射し出しておりました。花に光が射し、神々しいまでの美しい花となっておりました。自然の力に逆らわず、我が身の全てをあるがままにゆだね任せてしまう本当の強さに触れた思いが致しました。生きる力の素晴らしさを見たのでした。そして『野に咲く花に神宿る』とある方が言っておられた事を思い出しました。翌朝、庭に出て見たところ花びらは全て落ちておりました。人もまた『斯の如きか』と心に刻む思いでした。
こんな心境の時、鯉沼廣行、田中之雄両氏からこのジョイントリサイタルのプログラムが届きました。その充実感のある内容から受けた印象とひびきの良い銀座の王子ホールを思いうかべているうちに虚空から韻き出て来るカを直感しました。そこで、この演奏会を「天籟」と名付けましを。尚、横笛の金子弘美氏そして琵琶の塩高和之氏と首藤久美子氏が共演して下さいます。演奏者と聴衆の皆様の感受性が深いところで一つになれる会が出来れば幸いに存じます。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。
伝統文化を育てる会 岡 完保 |