ベルリン州立劇場 タケミツ−マイ・ウェイ・オブ・ライフ

 


地元紙が紹介した「タケミツーマイ・ウェイ・オブ・ライフ」の公演内容(写真の右側が田中)。

ドイツ・ベルリン州立劇場

 

『音楽の友』2004年12月号に、「武満徹への大いなるオマージュ」(取材・文=中田千穂子)と題して、『武満徹―マイ・ウェイ・オブ・ライフ』ベルリン初演の模様が掲載されています。
 その中で、「生前の武満と頻繁なコラボレーションがあった三橋貴風(尺八)、田中之雄(琵琶)、山口恭範(打楽器)により、武満作品の正当な解釈による生演奏を聴けたことは貴重な体験であった」と紹介されています。


 


「武満徹―マイ・ウェイ・オブ・ライフ」ドイツ公演を振り返って

――田中之雄 




共演した女性と記念撮影に収まる
  ドイツでの公演「タケミツーマイ・ウェイ・オブ・ライフ」には、正直なところ面食らいました。
 公演の中で、琵琶の私(=田中)は、尺八の三橋貴風さんと一緒に、武満徹作曲「ノーヴェンバー・ステップス」のソリストとして招かれました。ノーヴェンバー・ステップスと言えばこれまで、オーケストラの演奏者とともに、観客席から見て、琵琶と尺八の奏者は、指揮者の少し前に陣取って演奏してきました。ところが、今回は、オーケストラは、舞台下のオケピットに納まり、私と三橋さん2人は舞台の壇上に祭りあげられたのです。
 しかもふだん慣れ親しんでいる紋付袴のいでたちではなく、演出家が用意した、見た目、鵜飼のような服装を身にまとうことになったのです。日本を出発前、ドイツの主催者から、身長など細かい体のサイズの問い合わせがあり、不思議には思っていたのですが、この舞台衣装のためだったのでした。
 ノヴェンバー・ステップスの演奏開始とほぼ同時に、私たち2人は、歩いて移動、舞台右側に立ち、演奏中、ちょっと強面で近寄りがたい女性が私たちのところへやってきてからむような場面もありました。
 ちょうどオペラ仕立てのノヴェンバー・ステップスが繰り広げられ、私たち2人も、その中の一員としての役回りを演じる形となったのです。
 琵琶と尺八の演奏の場面が終わりに近づくと、足元の舞台がするすると後ろに下がり、幕が降りてきて私達は舞台から姿を消すことになりました。
 オーケストラとの共演のみでしたら、通常3、4回ほどのリハーサルがほとんどですが、今回は9日前には現地入りしリハーサルを重ねることになりました。

ドイツでの公演を振り返る(自宅で)
  役者さんが近寄ってきたり、声を出したりする。私たちは構うことなく演奏を続ける。さらに、曲の開始とともに歩いていくことも考えていなかったし、動く舞台の上で演奏するというのも初めてのこと、正直なところ、最初のころは集中力が削がれることが多少ありました。
 実は、別の場面では、パーカッションの山口恭範さんが登場したのですが、山口さんの場合は、移動も滑るようにスムーズではなかったりの台座の上で打楽器を演奏しなければならず、私たち以上に苦労したようです。
 この公演は、1月パリで公演につづいて、4月、東京でも開催されます。これまでにない武満徹の世界が堪能できると思いますので、多くの皆様のご来場をお待ちしています。(談)